書籍タイトル | 学力喪失──認知科学による回復への道筋 |
著者 | 今井 むつみ |
出版社 | 岩波書店 |
発売日 | 2024年9月24日 |
どんな人におすすめの本か
本書は、子どもたちの「学ぶ力」に関心を持つ教育関係者、保護者、そして認知科学を通して教育改善を模索する方々にとって必読の一冊です。特に、学力不振の原因とその回復方法を知りたい人にとって、具体的な解決策が示されています。
この本の要約
『学力喪失──認知科学による回復への道筋』は、子どもたちが本来持つ「学ぶ力」を学校教育の中で十分に発揮できない原因を探り、その回復への道筋を示した一冊です。認知科学の視点から、学力の躓きの原因を解明し、子どもたちが持つ本来の学ぶ力を引き出すための実践的な提案が豊富に盛り込まれています。
第1章: 小学生と中学生は算数文章題をどう解いているか
この章では、子どもたちが算数の文章題をどのように理解し解いているのかについて分析されています。多くの子どもが文章を正確に解釈できず、途中でつまずいたり、解答に至る手順で誤りを犯してしまう原因が詳しく解説されています。特に、文章から数式への変換を行う際に、言葉の意味を誤って理解したり、読解不足が問題解決を阻んでいる点に焦点を当て、改善方法を探ります。
第2章: 大人たちの誤った認識
ここでは、教育者や保護者が学力や知識に対して抱く一般的な誤解について解説しています。テストの点数や暗記量に過度に依存した評価が、子どもたちの深い理解を妨げている点を指摘し、本質的な学びを阻害している原因としています。また、従来の教え方がどのように子どもたちの理解力を制限しているかが述べられ、教育における新たな考え方の必要性が強調されています。
第3章: 学びの躓きの原因を診断するためのテスト
著者が開発した「たつじんテスト」を紹介し、このテストを通じて、子どもたちが抱える学習のつまずきを具体的に把握する方法について説明しています。テストの設計には、認知科学の理論が反映されており、ただの知識の確認ではなく、思考力や理解力、問題解決能力を測定することが可能です。このテストの実施例を交えながら、子どもたちの学びの診断に役立つ具体的なアプローチが示されています。
第4章: 数につまずく
この章では、数の概念や計算における躓きについて、子どもたちの具体的な事例を交えながら解説されています。例えば、分数の概念が難しいと感じる子どもが多く、数の扱い方において誤解が生じやすい問題を取り上げています。また、単なる暗記に頼らない思考法を身につけるためのアプローチが提案され、計算や数の理解を深める方法が実践的に解説されています。
第5章: 読解につまずく
文章の読解力が算数など他の教科にも影響を及ぼす問題について分析されています。特に語彙力不足や、文章の文脈を理解する力が欠けていると、文章題の理解や内容の把握に支障が生じることが指摘されています。子どもたちが読解においてつまずく原因を具体的なケーススタディと共に考察し、改善のための訓練方法が提示されています。
第6章: 思考につまずく
論理的思考や問題解決の場面で子どもたちがどのように躓くのかが詳しく解説されています。認知処理の負荷がかかりすぎて思考が停止してしまうケースや、物事を柔軟に考えるための視点の変更ができないことが学習における大きな障害となる点が指摘されています。問題解決能力の向上のために、日常生活で取り組める簡単なトレーニング方法も紹介されています。
第7章: 学校で育てなければならない力──記号接地と学ぶ意欲
「記号接地」という概念を紹介し、学ぶ意欲を持ち続けるために学校で育むべき力について論じています。人が新しいことを学ぶ際に必要な、言葉やシンボルと具体的な経験や知識を結びつける力が記号接地であり、これが不足していると抽象的な学習が難しくなるとしています。また、生成AIの能力と比較することで、人間の学びの特性と可能性についても考察が深められています。
第8章: 記号接地を助けるプレイフル・ラーニング
遊びを通じた学習(プレイフル・ラーニング)の重要性が語られています。遊びを取り入れた学習は、子どもたちが自ら主体的に関わることで、記号接地を助け、学習への積極的な姿勢を育てる効果があるとされています。具体的な事例や、家庭や学校で実践可能な遊びを通じた学びの方法が紹介されており、子どもたちが楽しく学べる環境作りの提案がなされています。
第9章: 生成AIの時代の子どもの学びと教育
AI技術の急速な進展が教育に与える影響について考察しています。AIの能力が人間の教育にどのようなメリットやデメリットをもたらすのか、特に子どもの学びにおける「人間らしさ」をどう守るべきかについて提言がなされています。認知科学の視点から、生成AIが子どもの学習に与える影響を分析し、これからの教育の在り方についてのビジョンが示されています。
全体を通して
『学力喪失──認知科学による回復への道筋』は、子どもたちが本来持つ「学ぶ力」を最大限に引き出し、学力不振の原因を改善するために、認知科学の視点から教育の在り方を再考する意義深い書籍です。子どもたちの学習過程における躓きを豊富な事例をもとに分析し、単なる知識の詰め込みではなく、本質的な理解を促すための方法が提案されています。教育現場における具体的な改善策も多数紹介されており、教育関係者や保護者が子どもたちの潜在能力を引き出すための貴重な参考書となるでしょう。
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Amazonと楽天ブックスのレビュー
- 楽天ブックスレビュー
「具体的な事例が多く、実践的なアプローチが参考になりました。子どもたちの学びを支える重要性を感じました。」 - Amazonレビュー
「認知科学を通して子どもの学習理解を深められる貴重な本。教育関係者必読です。」 - Amazonレビュー
「学びのつまずきを認識する方法と解決策が分かりやすく解説されており、とても役立ちます。」 - 楽天ブックスレビュー
「読みやすく、内容が豊富で非常に有益。保護者にとっても必見です。」 - 楽天ブックスレビュー
「本書は教育現場の問題を的確に捉え、解決策を提示しています。」
まとめ
『学力喪失──認知科学による回復への道筋』は、認知科学の視点から子どもたちの学力回復への道を探り、教育現場における具体的な改善策を提示した重要な一冊です。教育関係者や保護者が子どもたちの学力を伸ばすための貴重な参考書となるでしょう。