【要約/レビュー】『そして、バトンは渡された』

2024年10月9日

AZU（ドクショル管理人）

書籍タイトル

そして、バトンは渡された

著者

瀬尾まいこ

出版社

文藝春秋

発売日

2018年2月22日

この本の要約

『そして、バトンは渡された』は、様々な家族の形とそれに伴う愛情、絆、そして成長を描いた感動的な物語です。主人公の森宮優子は、何度も親が変わるという特異な状況で育ちます。彼女の人生には、多くの「親」が関わり、そのたびに優子の生活も変わっていきますが、優子は決して不幸ではありません。むしろ、周りの人々から多くの愛情とサポートを受けながら成長していきます。

この物語の魅力は、優子を取り囲む大人たちの多様な価値観や、それぞれの親子関係のあり方が丁寧に描かれている点にあります。それは「普通の家族」ではなくとも、愛情と支え合いによってつくられる特別な絆が存在することを示しています。

第1章: 出会いと別れ

第1章では、主人公・優子が、これまでの人生で何度も親が変わってきたことが描かれます。母親の再婚や離婚が続き、次々に違う家族と生活を共にする優子は、一見すると不安定な生活を送っているように思えますが、実はそのすべてが優子の人生にとって貴重な経験となります。

第2章: 新しい父親、森宮さんとの生活

物語の中盤では、優子は森宮さんという新しい父親と一緒に暮らすことになります。森宮さんは優子に対して無条件の愛情を注ぎ、彼女が安心して生活できる環境を作り出します。ここで描かれるのは、血の繋がりがなくとも、深い愛情が家族を形成する力です。

第3章: 多様な家族の形

物語は優子を取り囲む複数の「親たち」にも焦点を当てています。それぞれの家庭や価値観、そして彼らが優子に与える影響が、彼女の人生にどれだけ重要であったかが語られます。この章では、家族の定義が決して固定的なものではなく、時に変わることによって新しい家族の形が生まれることが強調されています。

第4章: バトンが渡されるとき

最後の章では、タイトル通り「バトン」が渡される瞬間が訪れます。優子が成長し、彼女自身が次の世代に何かを渡していく準備をする場面が描かれます。彼女にとって、家族や親との関係は単なる過去の経験ではなく、これからの人生においても重要な意味を持つものです。

全体を通して

『そして、バトンは渡された』は、現代の家族観に一石を投じる作品です。家族という概念が必ずしも血縁や固定された形に基づくものでないことを、この物語は優しく教えてくれます。瀬尾まいこの繊細な筆致で描かれる親子の物語は、読者の心に温かさを残すとともに、愛情とは何かを深く考えさせられる作品です。また、多様な親子の形が描かれているため、幅広い世代に共感を与える力があります。