【要約/レビュー】透明な螺旋

2024年9月25日

AZU（ドクショル管理人）

書籍タイトル

透明な螺旋

著者

東野圭吾

出版社

文藝春秋

発売日

2021年9月3日

この本の要約

『透明な螺旋』は、東野圭吾による「ガリレオシリーズ」の第10作で、科学者であり名探偵でもある湯川学が再び複雑な事件に挑む推理小説です。物語は、南房総沖で発見された男の銃殺死体をきっかけに進展し、事件の背後には複雑な家族関係や過去の事件が絡んでいることが明らかになります。科学的な推理を軸にしつつも、今回は湯川自身の内面や、彼がこれまで隠してきた感情や過去が掘り下げられ、物語により深い人間ドラマが描かれています。

第1章: 銃殺事件の謎

物語は南房総沖で発見された一人の男の銃殺死体の発見から始まります。事件の表面的な状況は単純に見えるものの、次第に背後には複雑な人間関係が絡んでいることが明らかになり、捜査は難航します。湯川学がその事件に引き寄せられるようにして関わり始め、科学者としての推理を駆使しながら謎を解き明かしていきます。物語序盤は、科学的なアプローチと感情的な対立が織り交ぜられ、読者に事件の複雑さを感じさせる展開が続きます。

第2章: 隠された過去

捜査が進むにつれて、被害者の家族やその周辺に隠された過去の出来事が次第に明らかになっていきます。特に被害者が抱えていた家族との問題や、その過去に絡んだ出来事が、事件の真相に深く関係していることが浮かび上がります。この章では、家族の絆や裏切りが描かれ、事件の背後にある人間関係の暗部が次々と明かされていきます。湯川は冷静に分析を続けつつも、その過程で自身の内面にも触れる場面があり、読者にとって物語の深みが増していきます。

第3章: 湯川の葛藤

シリーズではこれまでクールで論理的な側面が強調されてきた湯川学ですが、この章では彼の人間らしい内面が強く描かれています。科学者として冷静に推理を進める一方で、湯川自身の過去の出来事や感情が浮かび上がり、彼の葛藤が読者に共感を呼び起こします。物語は単なる事件解決にとどまらず、湯川の人間性に迫る重要な展開が続きます。特に彼が自分の選択と過去にどう向き合うのかが、物語全体に大きな影響を与える章となっています。

第4章: 透明な螺旋の結末

物語の結末は、事件の謎解きだけではなく、湯川学自身の内面の旅とも言える展開を迎えます。事件の真相が明らかになると同時に、湯川の感情や過去が浮き彫りにされ、読者に深い余韻を残す結末となっています。科学的な推理と、人間の感情や過去の出来事が織り交ぜられ、東野圭吾の筆致が冴え渡るエンディングは、推理小説としてだけでなく、感動的な人間ドラマとしても強い印象を与えます。

全体を通して

『透明な螺旋』は、湯川学というキャラクターの新たな一面を引き出した傑作であり、推理小説としてのスリリングな展開と、深い人間ドラマが見事に融合しています。事件の解決に向けた科学的な推理は緻密でありながら、同時に人間の感情や過去の出来事が絡み合い、物語全体に深い奥行きを与えています。シリーズファンにとっても、新たな発見と感動が得られる一冊です。