書籍タイトル | ヒポクラテスの誓い |
著者 | 中山七里 |
出版社 | 祥伝社 |
発売日 | 2015年5月 |
どんな人におすすめの本か
法医学やミステリーのジャンルに興味がある方はもちろん、医療や死生観に関心がある方に強くおすすめできる一冊です。物語を通して、医師としての使命感や倫理観について深く考えさせられます。また、専門知識が分かりやすく解説されているため、初心者でも楽しみながら読み進めることができます。キャラクターの魅力的な成長や緻密なストーリーテリングを楽しみたい方にもぴったりです。
この本の要約
本作『ヒポクラテスの誓い』は、法医学をテーマにしたミステリー小説でありながら、深い人間ドラマと倫理観を問いかける要素を含んでいます。主人公の栂野真琴が法医学教室での研修を通じて、自身の医師としてのあり方を模索する中で、様々な事件と向き合います。解剖を通じて解き明かされる真実や、法医学の魅力をリアルに描写するストーリーが展開されます。
第1章: 生者と死者
物語の幕開けとして、主人公・栂野真琴が浦和医大の法医学教室に配属されます。そこで彼女が初めて体験する解剖は、凍死とされる遺体の調査です。偏屈な法医学教授・光崎藤次郎や、個性的なキャシー・ペンドルトンと共に、真琴は法医学という未知の世界に足を踏み入れます。初めての遺体解剖に挑む中で、死者が残した真実にどのように向き合うべきかを考えさせられる場面が描かれています。
第2章: 加害者と被害者
交通事故により命を落とした被害者を巡る解剖依頼が法医学教室に持ち込まれます。一見ただの事故死に思われたケースでしたが、被害者家族の証言や解剖結果から新たな疑問が浮かび上がります。真琴とキャシーは事故現場を訪れ、遺族の苦悩と向き合いながら真実を解き明かします。この章では、法医学が家族の感情や社会的背景とどのように交錯するのかが詳細に描かれています。
第3章: 監察医と法医学者
東京都で発生した競艇選手の死亡事故において、監察医務院の解剖報告に矛盾が見つかり、真琴たちは再調査を開始します。競艇という特殊な競技の背景や、解剖報告書の意図的な操作などが絡む中で、法医学の信頼性や専門性が問われます。この章では、法医学者としての責任感や、他の専門機関との協力・対立の様子が描写されています。
第4章: 母と娘
真琴の親友である裕子の突然の死により、物語はより個人的な側面に展開します。親友の死の背景を探る中で、裕子とその母親との関係性や、真琴自身の葛藤が浮き彫りになります。解剖によって裕子の死因を明らかにしようとする試みは、家族間の絆や隠された秘密をも明るみに出します。この章は、法医学が個人の感情にどのような影響を与えるかを象徴的に描いた部分です。
第5章: 背約と誓約
研修医としての自分の責任感を問われる場面で、真琴はある患者の死因を巡り医療現場での隠蔽体質と向き合います。患者のカルテが意図的に消去された可能性に気付き、彼女は医療倫理と自身の信念の間で揺れ動きます。この章では、医師としての誓いと現実の矛盾が明確に描かれ、読者に倫理観について深く考えさせられる内容になっています。
全体を通して
『ヒポクラテスの誓い』は、死者から生者に向けたメッセージを法医学という視点で描き出した作品です。各章で取り上げられるテーマは、単なるミステリーとしての面白さだけでなく、人間の生き方や社会的な課題にまで深く切り込んでいます。主人公・真琴が法医学教室で経験する葛藤と成長のプロセスを通じて、読者もまた、医療と倫理の在り方について自問するきっかけを得られるでしょう。
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Amazonと楽天ブックスのレビュー
- 楽天ブックスレビュー
「法医学の視点から描かれる物語に心を打たれた。初心者にも分かりやすい説明がありがたい。」 - Amazonレビュー
「法医学を軸に展開される物語は重厚でありながらテンポが良い。キャラクターも魅力的。」 - Amazonレビュー
「事件のミステリー要素と人間ドラマが見事に融合している。」 - 楽天ブックスレビュー
「専門知識に裏打ちされたリアルな描写に引き込まれた。感動のラストだった。」 - 楽天ブックスレビュー
「人間の生き方や死について考えさせられる、心に残る作品。」
まとめ
本作は、法医学という専門的な分野をミステリー小説として練り上げた中山七里の力作です。事件の解明というスリリングな要素だけでなく、キャラクターの成長や人間関係の深みが読者の心に響きます。読後には、医療の在り方や人間の倫理について考えさせられる、余韻の残る作品です。多くの方にとって、新たな視点を得られる一冊となるでしょう。