【要約/レビュー】『笑うマトリョーシカ』

2024年11月27日

書籍タイトル	笑うマトリョーシカ
著者	早見和真
出版社	文藝春秋
発売日	2024年6月5日

どんな人におすすめの本か

政治小説やミステリーが好きな人、人間心理や複雑な人間関係の物語に興味がある人におすすめの一冊です。また、現代の社会問題や権力の裏側をテーマにしたストーリーに惹かれる方にもぴったり。清家一郎という謎めいた人物を追う女性記者・道上香苗の視点を通じて、物語の奥深さと心理描写の巧みさを存分に味わえます。

この本の要約

『笑うマトリョーシカ』は、若手政治家・清家一郎とその秘書・鈴木俊哉の物語を通じて、権力の魅力と影を深く描き出します。物語は清家を取り巻く人々の死や謎めいた過去、そして彼を調査する記者・道上香苗の視点で進行。カリスマ性に溢れる清家が心に秘めた真実に迫るスリリングな展開が見どころです。

第1章: 出会い

四国・松山の名門校で、清家一郎と鈴木俊哉が運命的に出会います。清家は生徒会長としてのカリスマ性を発揮し、周囲の生徒を魅了。一方、鈴木は清家に憧れ、彼を支えることを決意します。この出会いが物語のすべての始まりであり、二人の深い絆の基盤が形成される重要な章です。

第2章: 青春の日々

高校時代、清家と鈴木は生徒会活動を通じてさらなる絆を築きます。清家の華やかさが周囲を引きつける一方で、鈴木は彼を支えるブレーンとして頭角を現します。二人の関係性には深い信頼が生まれ、物語の中心となる「支える者」と「支えられる者」のテーマが描かれます。

第3章: 大学時代の試練

清家と鈴木はそれぞれ新たなステージに進みますが、大学時代には多くの試練が待ち受けます。清家が次第に政治家としての素質を見せ始める一方で、鈴木は彼を支えながらも、清家の内面に他者の影響を感じ取り、戸惑いを覚えます。この不安感が物語の重要な伏線となります。

第4章: 政界への足掛かり

若くして清家は衆議院議員に当選。政界での立場を築き始めます。一方で、鈴木は秘書として支えながらも、彼のカリスマ性の裏にある闇を感じ始めます。清家の成功に伴い、彼をめぐる人々の関係性が複雑に絡み合う章です。

第5章: 官房長官への道

清家は47歳で官房長官に就任。政界の頂点を目指し歩みを進める一方で、彼を取り巻く謎が一層深まります。物語の緊張感が高まるこの章では、清家の影響力の拡大が詳細に描かれ、道上香苗の追及が本格化していきます。

第6章: 過去の影

道上香苗が清家の学生時代からの過去を掘り下げます。家族や旧友の証言を基に、清家の二面性が浮き彫りになります。彼の過去の影が現在にどうつながっているのかが明らかになる章です。

第7章: 操り人形の真実

清家の行動の背後にある謎めいた存在が示唆されます。鈴木との関係、そして清家を動かしている「何か」が物語の核心に迫ります。

第8章: 真相の追及

道上が清家の秘書・鈴木に接触し、彼を通じて清家の内面に迫ります。真相が徐々に明らかになるこの章は、読者をさらに深く引き込む展開です。

第9章: 終幕

清家の真実が明らかになるクライマックス。物語の集大成として、登場人物それぞれの選択と運命が交差します。清家の心の闇とその行動の裏側が解き明かされ、読者に強烈な印象を与える結末です。

全体を通して

『笑うマトリョーシカ』は、人間の本質や社会の闇を見つめ直すきっかけを与える作品です。政治家という特別な舞台を通じて、カリスマ性の背後に潜む危険性や、他者を操る力の恐ろしさを浮き彫りにします。ストーリーの展開はスリリングで、読み応えがあり、最後まで読者を飽きさせません。深い心理描写と社会的テーマが絶妙に組み合わさり、多くの人に新たな視点を提供するでしょう。